朝鮮における住宅は、主にアンバン(主婦の部屋・奥の間)、サランバン(主の部屋・応接間)、ゴンノンバン(その他の家人の部屋)などの空間・居室がありますが、それぞれの空間で家具は異なった様式をもっています。そこで、このページでは、アンパン家具、サランバン家具そして台所で用いられた家具の3つをご紹介いたします。

アンバン家具

アンバンはすなわち「奥の間」のこと。主の妻が寝起きし生活の様々な事に用いる内室で、屋敷の中でも一番良い、中心的かつな部屋を指します。

このアンバンでは、機能的な家具が多く、木目が美しいけやきや黒柿で作られ、漆・螺鈿・華角などの華麗な装飾を施した家具がたくさんあります。また白銅や真鍮に彫金を施した金具なども多用されています。これらの装飾は、家の中にいい気運を呼ぶためのもので、素朴な雰囲気のサランバン家具とは大きく異なります。

アンバン家具は、個人や家庭における富貴と幸福を願う朝鮮時代の女性たちの思い・願いが色濃く反映された興味深い家具といえるでしょう。

サランバン家具

サランバン(舎廊房)は両班(ヤンバン:朝鮮時代の官僚・貴族階級のもの)の男性が学問を磨き、お客様を接待する居室です。

両班は「清貧」を理想とした儒教思想を崇拝し、それを実践していくため、拠点となるサランバンに置かれる家具や文房具は、素朴で格調の高いものが選ばれ、文人好みの家具・調度品が多く存在します。そのため、視覚的に負担にならない素朴な質感の桐、松が多く使用されており、金具は鉄が多く用いられています。複雑な模様やきらびやかな装飾と豪華な塗りは避けられているのが、特徴です。

サランバン家具には「書案」、「経床」などのいわば文机の類、「文庫」、「四方卓子」、「チェックジャン」、「ヨンサン」、「硯床」、「状差し」、「筆入れ」などの文房家具や様々な書類を仕舞う書庫、本を保管する大小の箱、常備薬を入れておくヤクジャン、貴重品を保管する小さな家具、衣服を保管するウイゴルイジャンなどがあります。

台所家具

台所家具は重量に耐えられるように堅牢で丈夫に作られています。朝鮮時代の家屋の構造は、食事をする部屋が台所から離れていたので食糧を移動したり、食事をする際に使用する膳の種類が実に多様に発達しているのが特徴です。
主な台所家具には「米びつ(ディジュ)」、「食器棚(チャンチャン)」、「棚(チャンタク)」、「膳(ソバン)」などが代表的で、木で作られた小さな器と容器(ハンジバック)類などもあります。